『バッタを倒しにアフリカへ』読了
「砂漠のリアルムシキング」こと、前野ウルド浩太郎さんの『バッタを倒しにアフリカへ』を読みました。とてもおもしろかった。とてもわかり易い書評をクマムシ博士さんが書かれているのでそちらをご参考ください。
http://horikawad.hatenadiary.com/entry/2017/05/21/114625
ファーブル昆虫記に魅せられて、昆虫学者を志した前野ウルド浩太郎さん。しかしながらなかなか研究職で食っていくというのは難しいとのことで、「研究で食っていく」というゴールのために悪戦苦闘していく過程が書かれています。
かといって重く感じさせないのは、著者の性格なのか、読み手には軽快な話として伝えようという戦略なのかはわかりませんが、現実の厳しさを事実として読み手に伝えつつも、マイナスな感情に流されないたくましさを感じさせてくれます。
筆者が研究の対象にしているバッタ(サバクトビバッタ)は、アフリカでは害虫として猛威を降るい、西アフリカだけで被害額は年間400億円にもなるそうです。アフリカの経済規模で400億円となると相当な打撃になるのは想像がつきます。そのお金がちゃんと流通して生産・消費に結びつけばその地域の経済だけでなく、政治の安定や、住む人達の生活水準の向上に役立つんではないでしょうか。そしてサバクトビバッタが大発生した際には、バッタの大群に対して大量の農薬で対応するというのが現在行える唯一の対策となっており、その農薬による自然や住民へのダメージが危惧されているとのことです。
もし、サバクトビバッタの生体が詳しくわかれば、より合理的な駆除方法が確立し、被害も代償も少なくなる可能性があるのですが、砂漠という気候やアフリカという先進国に住む人達にはなかなか順応できない現実があり、科学的な研究はなかなか進んでいないという現実があるようです。
そういった状況の中で、前野ウルド浩太郎さんは、研究者としてのキャリアを確立する過程で人間対サバクトビバッタの前線であるモーリタニアへやってきます。現地の研究所にお世話になり、相場以上のお金を支払う羽目になったりしながらも、筆者が日本で獲得した研究費で、フィールドワークを続け、その研究費の期限が来ると、貯金を切り崩しながら研究を継続、その一方であらたな研究費の獲得のために「有名になる」という決断をし、実際にブログやイベント出演などで一定の知名度を獲得し、京大からの研究職の座を得ることに成功します。私が前野ウルド浩太郎さんを知って、こうやって本を読んだのも、この活動をされていたからでしょう。
その一方で、人間対サバクトビバッタの死闘の最前線で、フィールドワークを行い、それを論文として発表することになるそうです。その研究でサバクトビバッタによる経済的な損失が10%でも減少すれば、年間40億円を西アフリカに援助することと同じと言っても過言ではないのでしょうか。
本の終盤の、サバクトビバッタの大群を追いかけながら研究を行っていく様子は、戦記物やSFの文芸作品を読んでいるかのような疾走感、迫力です。
今後、前野ウルド浩太郎さんの研究からアフリカのサバクトビバッタ対策が大きく前進することを願ってやみません。
とてもおすすめですが、この本、できれば中学生や高校生にも読んでほしいなあと思いました。よくある「なんで勉強するの?」の回答の一つが、はっきりとは書いていませんが、あるんじゃないかと思うのです。なので、とりあえず高校一年生の長男に「読め!」と渡しました。これはぜひ読んでほしいなあ。過剰にならないように読め読めプレッシャーかけたいと思います。
もうちょっと研究色の強いこちらも面白かったです。昆虫の研究ってこんなんなんだ、とか、研究で生きていくことの大変さをこちらも読みやすい文章で綴っています。
追記
なんと、前野ウルド浩太郎さんからコメント頂きました!ひゃー!
前野ウルド浩太郎さんありがとうございます!ますますのご活躍期待しています!
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